医師や研修医の残業の状況と残業代請求について
緊急対応が求められることも多く、長時間労働の多い医師。サービス残業が常態化した環境のなかで、やむなく残業をしていませんか?残業を行った分の残業代を受け取るのは、労働者として当然の権利です。
医師の労働環境

● 医師は患者の命や健康に深く関わるため、医療のプロとして患者のためには長時間労働をいとわないと考える人も多いのではないでしょうか。
また、緊急対応を求められることも多く、残業が常態化している環境にあるため、残業という観念自体が薄い傾向にあります。しかし、勤務医や研修医は仕事内容こそ特殊であれ、雇用されている以上は「労働者」です。
労働者であるということは、その労働環境は労働基準法に守られるべきであり、時間外労働を行った場合は当然残業代が発生します。
勤務医・研修医に多い残業代の誤解
● 裁量労働制だから残業代は発生しないと言われた。

医師は専門性の高い職業なので、裁量労働制が適用されるというのは誤解です。裁量労働制の対象業種や業務は細かく定められており、その中に医師は含まれていません。 病院では裁量労働制を導入することはできませんので、1日8時間、週40時間以上の労働を行えば残業代は発生します。
● 固定残業代制だと言われた。

業務手当や役職手当などの手当に残業代が含まれているというのも固定残業代と同じです。手当に残業代を含む場合は、労働契約書などに「残業代の何時間分に相当するか」を明記しておく必要があります。 明記している場合でも、手当に含まれる時間を超えて労働を行った場合は別途残業代が発生します。
● 年棒制には残業代は発生しないと言われた。
年棒制とは、給与の額を1年単位で決めることです。月給制でも年棒制でも残業代は発生します。年俸の中に残業代が含まれる場合、基礎賃金と残業代部分が明確に区分されている必要があります。 年俸の中に残業代となる部分が明らかになっていない場合は残業代を請求できる可能性があります。
● 当直・宿直は勤務時間外と言われた。

当直や宿直、宅直勤務中に医療行為をした場合に労働時間として認められることに争いはありません。
問題となるのは、医療行為が発生しなかった場合ですが、実際に医療行為を行わなくとも、急患などにより医療行為を行う必要性がある場合においては、労働から離れることを保障されているとはいえないため、労働時間と考えられます。
なお、宿直等に関しては、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁(労働基準監督署長)の許可を受けた」場合には、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないという規定があります(労働基準法第41条)。
医師・看護師等の宿直にもこの規定の適用があり、定時巡回や少数の患者の定時検温等、特殊の措置を要しない軽度又は短時間の業務に限る、充分な睡眠がとれるなどの要件を満たせば、労働基準監督署長からの許可を受けることができます。ただし、このように、許可を受けることができる要件は、かなり限定的です。
残業代の証拠
残業代を請求するためには、残業を行ったという証拠になる資料が必要です。
- 証拠となるもの
- タイムカード | 業務日報 | 時刻の記載がある医療記録・カルテ | 病院の入退室記録 | パソコンのログイン履歴