残業代請求前の事前準備 ~資料収集・証拠保全・内容証明~
残業代請求の前の事前準備をしましょう。
会社に未払い残業代を請求しようと決意したら、準備を始めましょう。残業代の証拠となる資料の収集や会社にある証拠を押さえるための証拠保全手続き、時効を中断するための内容証明郵便の送付など、請求のための準備を整えます。
残業の証拠となる資料の収集
残業代請求には、証拠収集が重要です。

未払い残業代を請求するために、もっとも重要となるのが「残業代の根拠となる証拠資料」です。法的に何かを請求する際には、請求する側に「確実な証拠を用意して立証する責任」があります。
証拠が何もなければ、残業を行ったと証明することはできず、残業が証明できなければ残業代は請求できません。
● 証拠資料は多ければ多いほどいい。

残業の証拠となるものは原本であるに越したことはありませんが、コピーや写真でもかまいません。タイムカードなど会社に保管されているものは回収される前に撮影しておくといいでしょう。まずは質よりも量を優先して、残業代請求の証拠になるものを集めていきましょう。
証拠保全手続き

既に退職してしまっていて証拠が集められない場合や「証拠は確かに会社にはあるはずだけど、会社が開示してくれない」という場合は、「証拠保全」という手続きを行うことで開示されることもあります。しかし、これは裁判所で訴訟を起こすことを前提とした手続きとなりますので、裁判手続きによる解決を望まない場合には、他方法による証拠の開示を求めることを検討しなければなりません。
証拠保全手続きは裁判所が動くので、残業代請求を行う本人が開示要求するよりも影響力が強く、多くの場合において会社は証拠の開示に応じます。
証拠保全手続きの申請は自分で行うことができますが、認められるためには証拠保全の必要性を裁判所に説明する必要があり、どの証拠を押さえるかも自分で決める必要があります。
証拠保全手続きの流れ
- 証拠保全の申立書を作成する
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押さえたい証拠はなにか、証拠保全が必要な理由を具体的に書く必要があります。裁判官が客観的に必要性を確認できる資料(疎明資料)を添付する必要もあります。
- 証拠保全の申し立てを行う
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申立書が完成したら、裁判所に提出します。提出の際には収入印紙や郵券も必要です。
- 執行官から会社へ証拠保全手続きの連絡がいきます
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事前に打ち合わせで決めた証拠保全実施日に、実際の証拠保全手続きに直前に執行官から会社へ連絡がなされます。
- 証拠保全の実施
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事前に打ち合わせで決めた証拠保全実施日に裁判官と裁判書記官が、証拠資料のあるであろう場所に赴き、証拠の開示を求めます。通常であれば申し立てた本人あるいは代理人(弁護士など)も同行します。カメラを持参したり、コピー機を持ち込んだりする場合もあります。
- 証拠を確保する
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裁判官の求めに従って、会社が証拠資料を開示した場合は内容を確認して撮影、書面の場合にはコピーを取ります。万が一、会社が証拠開示の求めに応じない場合は、裁判官にその場で証拠の提示命令を行うこともあります。
内容証明郵便の作成・発送
内容証明で時効を中断できます。

残業代請求には「残業代が支払われるべき給料日から2年」の時効があります。今から遡って2年前までの残業代までしか請求できません。 したがって、退職してから残業代請求を躊躇していると、その分だけ請求できる残業代の額が減っていきます。内容証明郵便で「催告」を行うことで時効を6か月間中断させることができます。
- 在職中に発送する場合
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内容証明郵便を発送すると、会社に「残業代を請求しよう」という意思が伝わります。そのため、退職手続きに非協力的になったり、冷遇される可能性もあります。また、会社が保管している残業の証拠を隠そうとするおそれもあるので、証拠収集の目処が立ってから内容証明郵便を作成したほうがいいでしょう。
リーガルプラスでは在職中からのご相談もお受けしています。具体的にどのように行動すれば良いのかアドバイスも可能です。お気軽にお問合せください。
- 退職後に発送する場合
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退職後に発送する場合は時効との戦いとなるので、できる限り早い段階で行動した方がいいでしょう。
証拠保全手続きを行う場合は裁判を前提としているので内容証明郵便の発送は不要です。逆に内容証明郵便が先行すると、会社に証拠隠しの猶予を与えてしまうことになります。
- 準備をする段階から弁護士にご相談ください。
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残業代請求をしようと思ったら、 準備の段階でリーガルプラスにご相談ください。
証拠資料の集め方や効果的なもの、これからやるべきこと、考えるべきことを、あなたの状況に合わせて、弁護士がしっかりアドバイスを行います。後から悔やまない、間違いのない具体的なアクションプランを一緒に検討します。