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残業代請求

【弁護士監修】残業代請求の時効が2年から5年に延長される?2019.10.09

現在(2019年10月時点)、未払い残業代を請求できる権利の時効は労働基準法で2年と決まっていますが、この残業代を請求できる権利の時効が5年に延長されようとしていることをご存知でしょうか?

まだ法案の提出もされていないので正式な施行時期は未定ですが、厚生労働省の有識者検討会では「5年」という期間をひとつの軸にして、延長の方向で議論が重ねられています。

残業代請求権が延長されることで、今後どのようなメリットがあるのか、詳しく説明いたします。

未払い残業代請求権の時効が延長される?

未払い残業代の請求権の時効が2年から5年に延長されると言われています。ここでは、残業代請求権の時効が延長される可能性が出てきた背景や、有休取得期間も延長される可能性についてご説明します。

残業代請求権の時効が延長される可能性が高まった背景

現在の民法では、損害賠償などでお金を請求できる期間は、請求できるようになってから10年間と定められています。

ですが、特定の債権はこの10年よりも短く「1年」「2年」「3年」「5年」の時効期間を設けていて、これを「短期消滅時効」と言います。実は、民法上は給料の請求権の時効が1年とされていたのですが(民法174条1号)、これだと短すぎるため、労働基準法によって「2年」に修正されています(労働基準法115条)。

例えば、毎月30日(当月分当月末払い)に会社から賃金が支払われるところを、2019年9月30日に支払われるべき9月分の給与が未払いだった場合、2021年9月30日が経過するまで(民法140条:初日不算入)、2019年9月分の賃金を請求する権利がある、ということです。

そして残業代も、時間外労働をしたことによる支払われるべき「賃金」になりますので、残業代請求権の時効も、現在は2年ということになります。

しかし、2020年4月1日に施行される民法改正によって、債権の消滅期間は10年から5年に短縮されます。一方で、同時に短期消滅時効も廃止されることになったため、消滅時効は原則「5年」に統一されることになったのです。

このまま改正民法が施行されると、現在の労働基準法では「2年」としている残業代請求権の時効が、売買や貸金など、ほかの請求権の時効(民法の定めにより5年)よりも短くなってしまいます。これだと、わざわざ労働基準法で民法よりも長い時効期間を定めていた意味がなくなってしまいます。

そこで、厚生労働省の検討会で議論を重ねた結果、労働者の権利拡充を重んじて延長に向けて検討されるようになり、残業代請求権の時効も民法の時効と同じく、「5年」となる可能性が高まってきたのです。

時効延長の背景には「働き方改革」の影響もある?
もともとは民法改正がきっかけで議論が始まった残業代請求権の時効延長ではありますが、時効延長の可能性が高まった背景には「働き方改革」の影響も透けて見えます。
働き方改革とは、法律で残業時間の上限を明確にして時間外労働を規制し、長時間労働の是正を目的とした取り組みです。平成30年の働き方改革法案成立の動きなども受けて、企業の労務管理に対するコンプライアンス意識を高めるため、政府がプレッシャーをかけたとも考えられています。
というのも、残業代の時効が5年間になれば、今までよりも多くの残業代を支払わなければならなくなりますから、会社が「それならいっそ残業をなくしたほうがよい」と方針転換することもありうるからです。
残業代請求権の時効が2年から5年になるのはいつから?

それでは、いつ、残業代請求権の時効が2年から5年に延長されるのでしょうか。

2019年6月13日に行われた厚生労働省の有識者検討会の中で、未払い残業代について「消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要」という結論が出ました。これを受けて現在、労働政策審議会で時効「5年」を軸にして検討をしているところです。

仮に法案が2019年中に提出されて可決・成立すれば、2020年には施行される可能性があります。

有給休暇の取得期間も5年に延長される?

もし、残業代請求権の消滅時効が5年に延長されるとすると、有給休暇の取得期間も5年に延長される可能性が出てきます。というのも、有給休暇の取得可能期間も、賃金と同じく、労働基準法で認められた「権利」に他なりませんから、消滅時効期間(労働基準法115条)の影響を受けるのです。

仮に時効が5年に延長されたとすると、有給休暇は最大で100日間取得できる可能性があります。(最大で取得できる年次有給休暇20日間×5年間=100日間)

有給休暇の消滅時効は2年の可能性もある?
厚生労働省における検討会で、有給休暇については、消滅時効の期間を現在と同じ「2年間」とする提案もあります。今後の労働政策審議会の議論によっては、残業代を含む賃金の請求権の時効と、有給休暇の時効が、異なる期間になる可能性もあると言えるでしょう。

未払い残業代請求の時効が5年になるまで請求しない方がいいの?

未払い残業代請求の時効が5年に延長される可能性が高まっていますが、消滅時効が5年に延長されるまで、残業代を請求するのは待った方がいいのでしょうか。

結論からお伝えすると、現時点では消滅時効が5年になるまで待つべきではないと言えます。

確かに、「5年」を軸に時効が延長される可能性の話はありますが、2019年9月時点でまだ法案は提出されておりません。具体的な施行時期はもちろん、制度内容も何一つ明確に決まっていないのです。具体的に何も決まっていないにも関わらず5年の延長を待つことは、決して得策ではありません。

5年への延長を期待して待っている間にも、当然のことながら時効は刻々と進んでいきます。場合によっては、時効が延長されない可能性もあります。こうした時間のロスやリスクを考えると、延長を待たず、状況に応じて請求していった方が現実的と言えるかもしれません。

未払い残業代請求の時効が5年になることで起こることは?

仮に今後、未払い残業代を請求できる時効が5年に延長されると、どのような影響や変化が想定されるのでしょうか。

請求額も2.5倍を請求できる
請求できる期間が2.5倍に伸びることによって、請求できる金額も2.5倍請求できるようになります。蓄積した残業代が2.5倍になるとすると、その額は高額になる可能性もあります。
退職後でも請求できる対象範囲が拡がる
請求できる期間が5年に延長されると、退職した後でも請求できる未払い期間の範囲が拡がります。
例えば時効2年のとき、退職して1年後に未払い残業代があったことに気付くと、その時点で請求できる未払い残業代は遡って1年分です。
ですが、時効が5年間になると、退職して1年後に未払い残業代があったことに気付いても、その時点で請求できる未払い残業代は遡って4年分になります。この3年間の差は大きいといえるでしょう。
労務管理を徹底する企業が増える
日頃から法令遵守している企業であれば問題はないのですが、労務管理を怠っていた企業にとっては、是正が求められることもあるでしょう。コンプライアンス意識を高めるための対応策や労務管理の徹底策など、対策をとる企業が増えるかもしれません。

まとめ

残業代請求権の時効が延長されれば、未払い残業代が発生している労働者にとっては、よりご自身の権利が拡充される可能性が高くなります。多くの未払い残業代を請求できる可能性が高まり、請求できる権利がなくなってしまったなどの時効が理由で泣き寝入りするケースも減るかもしれません。

一方で、企業側は、労務管理体制の整備を徹底するなどコンプライアンス遵守の意識が高まり、無駄な残業を抑えて効率的な組織運営を意識するようになることでしょう。

これは、引いては、無駄な残業をなくすという働き方改革の考え方に通じるところがあります。時効が延長されることでますます、労働者と会社側双方の「無駄な働き方はしない」「不用意に残業はさせない」という意識改革が求められることになりそうです。

残業代請求の時効が3年?
2019年12月27日に開かれた厚生労働省での労働政策審議会分科会で、残業代の時効は当面3年とする方針が決まりました。先に解説させていただいたとおり、5年の時効延長が議論となっていたにもかかわらず、なぜ当面3年となったのか、その経緯を含め、いつから残業代請求の時効が3年になるのかについて、こちらで解説しています。

「残業代請求の時効が3年?」についてはこちら

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