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残業代請求

働き方改革でサービス残業が増えた!残業代は請求できる?2019.08.21

働き方改革関連法案が施行され、残業時間などの見直しも行われ、「これで早く帰れる」と期待している人も多いかと思います。

ところが、「働き方改革」によって本当に残業が減るとは言い切れないところもあります。むしろ、表面的には改革して残業が減ったように見せかける一方で、実際は今までと同等の仕事量をさばくためにサービス残業を強いることもできるのではないか、という不安の声もあるようです。では、実際にどのような問題が発生すると考えられるのでしょうか。また、いわゆる「サービス残業」をしたとき、残業代を請求することはできるかどうかについても解説します。

働き方改革で設けられた時間外労働の上限規制とは?

働き方改革関連法の中で規制が強化されたのが「時間外労働の上限規制」です。それでは、以前とはどこが違うのでしょうか。具体的な変更点をご説明します。

改正前と改正後の時間外労働の上限規制の違い

法改正前も改正後も、法定労働時間の「1日8時間、1週間40時間」は変更ありません。法定労働時間を超えた労働は、法律で禁じられています。

ですが、法定労働時間だけの業務では経済が回らないことを想定して、労使間の合意があれば時間外労働ができることになっています(いわゆる36〈サブロク〉協定)。法改正で変更されたのは、この時間外労働に関する次の内容です。

【改正前】(2019年3月31日まで※大企業が対象)※中小企業は2020年3月31日まで

法的拘束力がなく、長時間労働に上限なし

時間外労働時間は「月45時間、年360時間」まで延長できるという「限度基準」にとどまっていました。

また、36協定において「特別条項」付きの協定を結んでいれば、一時的又は突発的な時間外労働であれば、6ヶ月までは限度基準を超えることを認めていました。

一時的又は突発的な時間外労働の例

  • 予算や決算期の業務
  • ボーナス商戦に伴う繁忙業務
  • ひっ迫した納期の業務
  • クレーム対応
  • 機械のトラブルへの対応

「特別条項」には、
・1年間に6回を限度とする
・1ヶ月60時間までは延長できる
・1年間420時間までは延長できる
などが明記されていますが、これらの延長時間には法的拘束力がありません。つまり、労使間の合意が取れていれば、どんなに限度時間を超えても延長することができたので、長時間労働の温床になることが懸念されたのです。

現に、大手広告代理店や放送メディアの従業員の過重労働など、社会的に問題視された事件もありました。長時間労働の是正は急務となり法改正が検討されたのです。

【改正後】(大企業は2019年4月1日から、中小企業は2020年4月1日から施行)

延長限度が法律化されたことで「上限」を超えれば違法となる

改正後は、時間外労働時間の延長限度基準を次のように法律で定めました。

  • 時間外労働は原則的に「月45時間、年360時間」まで
  • 特別条項がつく場合でも、時間外労働は年720時間が上限
  • 原則の時間外労働「月45時間」を超えて労働できるのは年6ヶ月まで

「限度基準」から「法律」に変わったことで、会社がその上限を超えて労働させると違法になり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

※ただし、これらの上限規制には休日出勤の時間が含まれていません。休日出勤を含めば月45時間、年720時間、年6ヶ月を超えた労働が合法的に可能になるという点が懸念されており、これについては「2-3.休日出勤が増える可能性あり」で詳しく説明します。

「特別条項」には、先述の720時間以内の中で、時間外労働の設け方にも上限が設定されました。

  • 休日出勤を含み複数月の平均が80時間までは延長できる
  • 休日出勤を含み単月で100時間未満までは延長できる
  • 原則の時間外労働「月45時間」を超えられる回数は年6回まで

※上限規制の法律は、大企業は2019年4月1日から適用されており、中小企業は2020年4月1日から適用予定です。中小企業の定義は、小売業、サービス業、卸売業などの業種によって異なります。

上限規制が除外される業務

新技術・新商品等の研究開発業務の労働に関しては、上記の上限規制からは除外されます。法改正に伴って「労働安全衛生法」という法律も改正されたため、新技術・新商品の研究開発業務に関しては「労働安全衛生法」に基づく新しい規制が適用されます。(特定の労働時間を超えた労働者に対して医師による面談の義務化、など)

なぜ働き方改革によってサービス残業が増える可能性があるのか?

多くの方が、給料が支払われていない時間外労働のことを「サービス残業」と表現していると思います。しかし、法律上「サービス残業」は認められていません。時間外の分も含め、使用者が賃金を支払うのは法律上の義務ですから、働いた時間分の賃金が正当に支払われていないとすれば、違法です。

実は、法改正によって時間外労働の上限が規制されることで、サービス残業が増えるのではないかと懸念されています。というのも、会社側が上限規制を法的に強いられることで、表面上では法律を守っているように見せかける一方、実際には違法なサービス残業をするという、本末転倒な状況に陥る可能性があるからなのです。

具体的にどういったサービス残業が起こりうるのかというと、
・サービス残業の強制
・持ち帰り残業
・休日出勤の増加
が考えられるのですが、こちらについてそれぞれご説明します。

サービス残業の強制と考えられる手法

会社側がサービス残業を強いることを「サービス残業の強制」と言います。サービス残業の強制には主に次の3パターンがあり、どれも法律違反です。正しい解釈と合わせてご説明します。

①残業時間の切り捨て

〈誤った解釈〉

残業時間が端数のときなどに起こりうるものです。例えば終業時刻を13分オーバーして退社した場合に、「15分未満のオーバーは残業とは見なさない」「四捨五入して10分の残業とする」などの扱いをして切り捨てることがあります。切り捨てる時間の基準は15分、30分、四捨五入など様々です。

〈正しい解釈〉

終業時刻を1分でも過ぎればその時間は残業時間になります。また、1日単位の労働時間を四捨五入することは、法律上認められていません。

※1ヶ月間の総労働時間を30分単位で端数切り捨てや切り上げしたり、四捨五入したりすることは認められています。

②残業時間の単位設定

〈誤った解釈〉

残業時間を10分単位、15分単位などの単位で事前に申請させて会社がそれを許可する場合に起こりうるものです。申請した時間を超えて仕事をしているにも関わらず、申請した残業時間分しか残業代が支払われていないことがあります。

〈正しい解釈〉

事前に申請していた時間ではなく、実際の労働時間に基づいて支払わなければなりません。申請した時間を超えて仕事をしていたことを会社が黙認していた場合、仕事の延長を会社が認めたと見なされますので、延長した分の残業代も支払う必要が出てきます。

③残業時間の上限設定

〈誤った解釈〉

例えば、1日に2時間まで、4週間に30時間までの残業を認める、など、会社が残業時間の上限を決めている場合に起こりうるものです。会社が決めている上限時間を超えて仕事をしているにも関わらず、会社が決めた上限時間までの残業分しか残業代が支払われていないことがあります。

〈正しい解釈〉

事前に会社が残業時間の限度を定めていても、実際の労働時間がそれを超えていて、会社がそれを放置又は黙認していれば、会社は超過分の残業代も支払わなければなりません。使用者が放置や黙認した状態は、残業を認めている状態と見なされます。

みなし残業(固定残業代)にも要注意
一定額の残業代を毎月の給与に含ませて支払っている「みなし残業(固定残業代)」の場合も、残業時間の上限設定と同様の問題が起こりえます。
会社が事前に定めたみなし残業時間以上の時間外労働をしている場合は、会社は、固定残業代プラス超過分の残業代を支払う必要があります。
自宅などに仕事を持ち帰る「持ち帰り残業」

残業代が発生する労働は、職場内での時間外労働だけとは限りません。法改正によって労働時間の上限規制がかかったことで、職場以外での労働が強いられることも懸念されています。退社後に自宅などに仕事を持ち帰って仕事をする、いわゆる「持ち帰り残業」はそれにあたります。

例えば、
・仕事が終業時刻までに終わらず、会社の指示で持ち帰って家で続きの作業を行った
・持ち帰り残業をしていることを会社が知っていて、黙認している
こういった場合は残業代が発生する可能性があります。

持ち帰り残業の判断基準
「持ち帰り残業」は、会社の指揮命令下で行っているか、定時でこなせる業務量か、必要な業務内容かなどの総合的な状況から判断されます。持ち帰り残業の実態を証明できる客観的な証拠(労働時間の記録、仕事の成果物など)が重要な判断材料となります。
休日出勤が増える可能性あり?

改正後の規制内容には、時間外労働を合法的に延長できる抜け道があると言われています。その抜け道の一つとして、休日勤務へのすり替えの可能性が指摘されています。

「1-1.改正前と改正後の時間外労働の上限規制の違い」でもご説明したように、
・時間外労働は原則的に「月45時間、年360時間」まで
・特別条項がつく場合でも、時間外労働は年720時間が上限
・原則の時間外労働「月45時間」を超えて労働できるのは年6ヶ月まで
これらの上限規制には、休日出勤が含まれていません。

つまり、「1日当たりの残業時間を減らす(早く帰らせる)」代わりに、「休日を減らす(もともと休日だった日に1日8時間働かせる)」ことにより、残業を休日労働にすり替えることができてしまうおそれがあります。

もっとも、このような労働時間制度を導入するためには、新たな36協定を締結する必要があるほか、休日を減らすのであれば就業規則の改定も必要になります。

【補足】労働時間に含まれるべき時間が除外されている問題

ここまでは、仕事と直接的に関わる労働時間を中心にご説明してきましたが、仕事と直接的な関わりがない行為でも、労働時間に含まれるものがあります。

例えば、以下の行為は法律上の労働時間と判断される可能性が高いと言えます。これらの行為が法定労働時間を超えて強制されているにもかかわらず、残業代が支払われていないとすると、違法な残業代不払いの可能性があります。

  • 朝礼
  • 準備体操
  • 着替え(指定制服の着用など)
  • 休憩時間の来客対応
  • 仕込み時間(飲食店など)
  • 準備時間、掃除時間(開店前・閉店後)
  • 待機時間、手待ち時間(店員の客待ち、ドライバーの荷待ち、警備員の仮眠など)
  • 研修や社員旅行など会社の行事

サービス残業にも残業代は発生する

「2.なぜサービス残業が増える可能性があるか?」でご説明したように、「サービス残業」とは給料が支払われていない時間外労働のことを言います。サービス残業自体が違法な行為ですから、サービス残業の事実と違法性が認められれば、サービス残業にも残業代を支払わなければなりません。

サービス残業が行われる背景には、経営者側の「違法だとは知らなかった」「コストカットのため」などの認識不足、労働者側の「会社に言いにくい」「請求したら待遇や評価に影響しそう」という懸念があると考えられています。ですがこれらは、残業代が発生しない正当な理由にはなりません。

サービス残業を残業代請求する方法

もしご自身に、これまで説明してきたようなサービス残業をしている心当たりがある場合は、残業代が発生している可能性があります。以下では、実際に残業代請求をする際の証拠の集め方などをご紹介します。

残業代請求に必要な証拠、使えそうな証拠

タイムカードのような証拠がある場合とは異なり、サービス残業の労働は、タイムカードの退社時間記録後だったり、帰宅後の労働だったりするので、意識的に記録をしておかない限り、証拠が残りにくいのが実情です。

例えば、次の5つの記録はサービス残業の証拠になり得ます。1つだけでなく、複数の方法を使ってできるだけ多くの証拠を残しておくようにしましょう。

①パソコンを使っている残業の場合

パソコンのログインとログアウト時刻の履歴

会社のパソコン、退社以降に使ったパソコン、どちらのログ記録ともに履歴を保存しておきましょう。

送信したメールの送信履歴

残業で送信したメールの履歴を残しておきましょう。会社からのメールの送信履歴も、自宅のパソコンからの送信履歴も押さえておくようにしてください。

作成したファイルの保存時間の記録

残業で作成したファイルの保存時間を、スクリーンショットや写真などで記録しておきましょう。

※注意

OA機器のデータは損傷すると見られなくなります。履歴データは、パソコンに保存しておくだけでなく印刷しておくこともおすすめします。

②創作などで成果物を作る残業の場合

店頭販促物、配布物、掲示物などをサービス残業で作成した場合がこれにあたります。

パソコンのように作業開始、終了時刻が明確に記録できない点では、残業時間を証明する根拠にはなりにくいですが、サービス残業という時間外労働をしていた証拠にはなり得ます。

例えば、昨日まで職場には存在していなかった成果物を翌日持参して出勤した、自宅で作成することを会社は黙認していた、などの状況がある場合は、証拠になる可能性があります。写真や画像に残すなどして記録しておきましょう。

どのような工程を取っていつ完成したのか、作成を認めていた会社の状況などの記録を、日記や手帳などに残しておくことも忘れないでください。

③スマホでメールや投稿をする方法

出社したときと、残業を終えて退社するときに家族や友人にメールや投稿(LINEなど)で知らせることで、その通信履歴が出退勤時刻の参考記録として使える可能性があります。日記代わりとして、ブログの投稿や自分宛のメール送信でも構いません。

電車移動中などに送信・投稿をするのではなく、極力出退勤時に送信・投稿しましょう。また、ブログの場合は投稿時刻が分単位でわかるようになっていることが重要です。実際の労働時間がわかりやすく信憑性の高い証拠の方が、認められる可能性も高くなります。

④スマホアプリを活用する方法

スマホのGPS機能を使ってサービス残業の実態を記録できる残業アプリは、残業代の計算を想定してGPS機能で出退勤時刻を残せます。サービス残業の根拠として有効に使える可能性があります。

ただし、残業代の計算についてはあくまで目安の金額と捉えた方がよく、固定残業代制など特殊な勤務形態の残業代計算には不向きです。

⑤日記や手帳に記録をする方法

出退勤時刻や残業の内容を記録した日記や手帳も、残業時間の証拠になり得ます。消えないペンを使って、出退勤時刻は分単位で記録をするようにしてください。

サービス残業の実態を証明して残業代を請求するには、第三者(裁判官)も納得できるような客観的な証拠が必要です。用意する証拠の種類や数が多いと手間に感じるかもしれませんが、客観的な事実をしっかり記録しておくことで、サービス残業の時間として認められる可能性が高くなります。自信を持って正確な残業代を請求するためにも大事な作業と捉えて、きっちりと記録を残すようにしてください。

サービス残業の残業代請求の流れ

サービス残業をしていることに気付いたら、すぐにその日から、まずは勤務記録を残すようにしましょう。

証拠を揃えたら、会社に残業代の請求をする必要があります。

ただ、仮に万全な証拠が揃っていたとしても、個人で残業代の請求を交渉するとなると、会社はすんなりと交渉のテーブルに着かないことも珍しくありません。交渉に不安や難しさを感じたときには、まずは残業代や労働関係の法律に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

サービス残業は、働き方改革関連法案の施行に伴って、今後問題視される可能性があります。サービス残業の残業代請求は、専門的な法律や複雑な計算方法の知識が求められるもので、個人で対処するのは容易ではありません。

あなたがサービス残業の残業代請求で悩んでいるのであれば、すべてを1人で解決しようとすることだけは避けてください。1人で解決しきれるような簡単な問題ではないことが予想されるからです。着実に問題解決にむけて前進するためにも、まずは残業代と労働問題解決のプロである弁護士に相談することをおすすめします。

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